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第4章 ドル円相場のシュミレーション

売買シュミレーション

ではいよいよシミュレーションを通して売買を始めてみましょう。

すでに口座を開設し、証拠金として100万円を入金しました。ブローカーからインターネット上のサイトにアクセスするためのIDとパスワードをもらいます。まずはそこで自分の入金が反映されているか確認しましょう。

「売買の仮定」
このブローカーでは、ドル円の取引10万ドルを1枚と呼ぶことにし、1枚あたりの当初証拠金が30万円、維持証拠金が20万円とします。これで行うと、はじめからフル出動する場合、3枚分からスタートできるという計算になるわけです。

3枚分を持つために必要な証拠金
= 3枚X30万円 =90万円 <自分のお金100万円>

また、取引手数料は1枚あたり片道で2,500円としています。

自分が口座を持っているブローカーが提供する取引スクリーンの中には言うまでもなく取引レートが出てきます。しかし外国為替は取引所取引と違いOTCとよばれる種類の値付け方式が取られているので、できれば他の場所で提供されているレートも参考にしたいものです。為替レートの情報はインターネットのウェッブサイトでいろいろな業者が無料で提供しています。当然、取引所取引ではないので、業者によって提示されているレートはそれぞれ違います。表示が見やすいかどうか、見れるレートはリアルタイムのものか10分遅れのものか、なども含めて比較して、自分にとって使いやすいものを探しましょう

「シミュレーション」
ニュースを見ると、中国人民元の切上げが行われ、為替市場は大きく円高に動いているようです。昨日まで1ドル=113.40前後だったのですが、今は110.00にまで円高になっています。世の中では人民元はさらに高くなるとウワサされているようなので円高もさらに進行すると見て、さっそくドル円を売ってみることにしましょう。

さて今レートを見ると、このようになっています。

今日のドル円相場は、高値が111.47、安値が110.84銭となっています。そして現在値が111.03−08 と表示されています。人民元切上げのニュースがあった昨日は、高値が112.84、安値が109.89銭というかなり通常よりも広いレンジでの動きだったことがわかります。人民元のニュースが出るまでの1、2週間は大体一日にして1円弱の値幅のレンジでしたから、1日に3円も動くというのはかなり大きなインパクトの材料であったということの証でもあります。

昨日の興奮から一夜明けているわけですから、ここは通常の1円程度の値幅を想定します。昨日のニュースが未消化であればさらにもう1円ほど円高方向に進むと見て、逆に材料出尽くしと市場がみなして相場が戻ることがあっても1円くらいだろうと見込むわけです。

現値が111.03−08ということは、111.03 が市場で買いたいと思っている人の先頭で、111.08が売りたい人の先頭にあるのだということは前に説明しました。 今、さらなる円高を期待しているわけですから、すぐにポジションを作ろうとすれば成行注文でドル円の売りを執行することになり、111.03円の買い玉にぶつける形となります。 しかし、ここでは今日の高値である111.47付近のレベルにもう一度だけ戻ることがあるのではと思って、111.40に売りの指値注文を1枚だけ出すことにします。

ここでリスクついてまず考えてみる必要があります。

  1. つまり、今すぐにドルを売却することをあきらめて、しばらく様子見し、もうちょっと高くなるまで売りを控えようという引くリスク。今回は選択していません。
  2. そして現値ですぐに売らないということは、このまま相場がズルズルと下がってしまい、何も出来なくて終わってしまうリスク。
  3. また即座に売ってしまって、本日の高値近辺までもっていかれて苦しい思いをするかもしれないというリスク。

このように常にリスクを天秤にかけて相場の入りどころを模索するわけですが、今回のそれは最悪売れなくてもしょうがないほうのリスクを選択したことになります。

その後しばらく110.00 から111.28 までの間をウロウロしています。するとユーロがドルに対して先ほどよりも強くなってきました。110.40付近まで戻ることを想定していましたが、ドル自体が弱くなって来ていると見れば、このまま円高方向へ行ってしまうかもしれません。そこで思い切って指値から成行に注文のタイプを変更します。

今110.00−05 になっています。 成行注文に変えたので110.00のBid(市場の買い)にぶつかって、今ようやく110.00でドル売り1枚(10万ドル分)が約定しました。現値で執行ということは、このままでは売れないかもしれないリスクを排除して多少のアゲインストには耐えることを選択したことになります。

ドルを1枚だけ、すなわち10万ドル分を売って持っているという事は、最初に100万円を自分のお金として置いてあるので、

証拠金100万円 − 維持証拠金20万円 X 1枚 = 80万円

となり、損失を出してもよい限界の余力は80万円分ということになります。10万ドルの場合、1円動くと損益が±10万円となるので、単純計算すると8円まで反対方向へ行っても大丈夫ということになります。しかしそれを超えてしまうようだと、追加証拠金を支払うか、ポジションを閉じるかしなければならない、いわゆるマージンコール(追証)の状態になることを念頭においておきましょう。

ここでいちばん重要なことは、一発退場になってしまわないように必ずストップ注文を置いておくことです。円高に行くと思ってドルを売っているわけですから、反対に行くことを想定するなど縁起が悪いなどと思ってはいけません。気合を入れても、画面に向かってがんばれ!と叫んでみても、相場に通じる話しではなく、勝負をする時にはいついかなる時もゼロベースの思考を持って状況に対処していく姿勢が必要です。

とくに為替市場の場合には全世界に市場参加者が存在するわけで、自分の知らないところでどんな予期せざることが起こるとも限らないのです。要は先のことはわからないということを前提に動き、常に謙虚な気持ちで相場に臨んでください。相場の世界の熟練者のなかには、「オレはストップは置かない主義なんだ」と気合前面に豪語する人もいますが、そういう人たちは取るべきリスク量とリターンの分量を計量的に他人に説明ができるのでしょうか。持っているお金がなくなってしまってからでは遅いのです。自分自身を守るためのセーフティネットだと思って、ストップ注文を有効活用してもらいたいものです。

特に為替相場は値動きが早いので、想定外のことが起こってあっという間に3円動くということもありえます。リスクのとり方については後の6章で述べますが、とにかく相場は必ずしも自分の予想した方向へ、そのまま都合よく行くとは限らないので、戦い続けるための「命綱」だと思って必ずストップ注文は置くようにしましょう。

さてそこで、すでに今回は人民元のニュースで3円も動いた後ですし、初めての参加でもあるので、ストップは1円幅くらいにしておきます。111.00円で売ったので、112.00にストップ注文を置くことにします。ストップ注文も、ブローカーによって必ず指定した値段で渡してくれるところもあれば、値が飛んでしまった場合には飛んだ値段でつけるところもあるので、ブローカーのストップ注文の取り方がどうなっているかも確かめましょう。

たとえば、先ほどまで111.30−35だったのですが、日銀の為替介入が入って急に値が動き112.20−25というのが次に表示された値段ということがあり得ます。その際112.00でストップ注文を出していた場合に、必ずその値段で約定してくれるブローカーもありますし、112.25で約定するブローカーもあります。また業者によっては、112.00が市場でついたら112.10までならば買いの約定をしていいですよというタイプのストップ注文を受け付けているところもあります。ただしその際には、値段が112.10を超えて飛んだ場合には、約定されないで相場だけが上がってしまうリスクがともないます。

さて111.00で売った後の値動きです。

当初利食いは108.00に置いていましたが、109.00まで円が買い進まれた後、どうも109.00付近までいくと止まってしまい、あまり勢いがありません。そうこうしているうちに110.25−30レベルにまで戻ることもあるので、利食いを109.00に変更します。再度108.90−95くらいまで円高に動いたので、109.00の利食いオーダーは無事に約定され、ポジションはなくなりました。

ではここで、これまでの一連の取引きに関する損益を計算してみましょう。

(計算式)
110.00×10万ドル − 109.00×10万ドル − 2,500円×2(取引手数料は1枚につき片道2,500円) =  95,000円

また、取引数量を増やして、3枚(30万ドル分)売っていた場合には、以下のようになります。

(計算式)
110.00×30万ドル − 109.00×30万ドル − 2,500円×2×3枚 = 285,000円

6章で詳しくは述べますが、このように同じ値幅を取る場合でも、枚数を変えると損益が激しく違って来ますので、リスクの取り方とリターンの追及はたいへん重要なファクターになってきます。ここで、ブローカーの証拠金勘定に損益が正しく反映されているかを確認しましょう。また、不幸にもストップのほうがついてしまった場合の証拠金勘定も見てみましょう。

たぶん初めて取引をした時に、結果がストップで終わってしまった場合には、きっと少なからず落ち込むと思います。しかしストップのお陰で助かった点を考えて、また新たな気持ちで望んでください。あくまでこのロスは市場に預けた貯金だと思いましょう。