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第1章 外国為替取引の仕組み

外国為替で儲けるとは

必要は発明の母といいますが、人類史上「お金」という発明ほど人類を進歩させたものはないかもしれません。「お金」は物々交換では果たせなかった空間や時間を越えたモノの移動を可能にし、人類の活動を大幅に飛躍させました。

「お金」が生まれる以前は、モノとモノを交換するしかなかったわけですから、保存がきく、きかないに始まり、重いかどうかなど、価値を図る物差しを何にするのかで、さぞや揉めることも沢山あったでしょう。とても苦労していたに違いありません。しかし私達の祖先が「お金」を発明をした事で、「経済」としてひとつの活動となり、さまざまな歴史の英知を飲み込みながら地域や時間を越えて、「経済」は進化の一途を歩んで来ました。

20世紀に世界は共産主義、資本主義というイデオロギー対立によって経済的にも分断されましたが、結局その対立を超えて21世紀、世界は「経済」という意味では、今までの人類史上なかったほど、その結びつきを強めています。今やあらゆるものが世界中を行き来しながら、日々の暮らし、とりわけOECD各国に住む私たちの生活を成り立たせています。それを裏で支えているのが、まさに「お金」=「通貨」です。そして価値を図る物差しとしての「お金」=「通貨」がなければ、今のグローバル経済など成り立ちえません。

ではこの「通貨」は誰が管理するのでしょう。「通貨」を作って(=発行して)、それに信用を与えるのは国家です。1999年、一国だけでなく加盟する国家の集まりが運営する共通通貨「ユーロ」が誕生するまで、通貨は国家単位によるものでした。この通貨のやりとりが「外国為替取引」であり、この外国為替取引を通して世界経済は動いています。後の章で述べますが、いつでも円をドルに、ドルをユーロに交換できるのだとういうことを保証するのが、市場の流動性というものです。

ではこの国が認める通貨同士を交換する時、すなわち外国為替取引の際に決められる交換値段(=価値)について少し考えてみましょう。

「本日の円相場は、1ドル105円で商いされています。」というニュースの声が聞こえて来ました。あなたはどんなことを考えますか?

最近では海外に行くというのも当たり前の時代ですから、特に意識しなくても1ドルを交換してもらうのに、105円必要なんだというような事はすぐに頭に浮かぶでしょう。

理論的にはあなたがもしアメリカにいて、自分のお財布に105円持っていれば、1ドルのハンバーガーを買えるという計算が成り立ちます。しかし実際にはアメリカで100円玉と5円玉のふたつでハンバーガーを買おうとしても、奇特な人以外ほとんど受け取ってくれないでしょう。なぜならこのハンバーガーを売っているアメリカ人は、お客さんが払ったお金を使ってまたハンバーガー用のお肉の仕入れるか、お給料としてもらったあとお腹が空いたら近くでピザを買うかでしょうから、その仕入先や他のお店で受け取ってもらえないお金でもらっても何の価値もない事になります。

「通貨」は値段がついているだけでは意味がなくて、ちゃんと交換することができるから意味があるのです。

また先ほどと同じニュースを聞いても、ちょっと興味がある人ならば、「ほんの1週間前までは110円だったなぁ。」と思うかもしれません。1週間前まで110円だったものが今は105円なのですから、USドルで値段のついている同じものを、今ならば5円も少ない、パーセンテージで表せば4.5%も少ない日本円で手に入れることができるということになります。

為替で儲けるということは、「この変わる値段と値段の間を取る」ということです。 「値段と値段の間」というと、ちょっとわかりづらいかもしれませんが、同じ10USドルと表示されているきれいなマグカップ1個を1USドルが110円の時に買うよりは、105円になるのを待ってから買えば、50円安く買えるということです。この50円安く買うことで50円お金を残す(=稼ぐ)ことを、まずは為替で儲ける基本だと思って下さい。

では一体円ドル相場が110円から105円になるということはどういうことなのでしょうか。「なぜ為替が動くのか」については2章で詳しいことは述べますので、ここではまず大きなイメージだけをつかんでください。

そもそも物理的には全く同じ1枚の硬貨の値段が変わるためには、何かその値段(=価値)を変える要素があるはずです。

先ほど「通貨」は交換できるから意味があると言いましたが、そもそも交換してもらえるためには信用がないといけません。まずその大前提として、その通貨の信頼性が値段を決める根本となります。そしてその値段を決めるための基準があると大変便利です。

「重さ」を例にします。各地域がお互いに交流が少なく文化的にも閉鎖的な状態であった時代の世界には、独自のさまざまな重さを計る基準がありました。もしあなたがモスクの脇で売られている火を噴く魔法の水が欲しくて、それが入った桶ひとつが重さ1バレルだと言われました。自分の船の重量制限があと4升しかないとは知っていても、比べる基準がなければ困るでしょう。しかしリットルでもブッシュルでも、基準になるリットルに対して1バレルが何リットルで、一升が何リットルになるかを知っていれば、重い樽を抱えて船に載せてから船が沈むかどうかで確かめる必要もなくなります。

外国為替にも基準となる通貨があります。米ドルです。この基準としてのアメリカドルに対していくらの値段になるかという計算が外国為替取引レートの基本です。

ですからこのアメリカドルに対して、ある通貨がどれだけ相対的に信用されているかということで値段の基本が決まります。例えばGDPで世界第二位という経済力を背景にした日本円と、国の債務を払うこともままならず、特に成長しそうな産業もないココナッツ国という国のヤッシーという通貨があったとします。ふたつの通貨のうち経済力のある日本円の信用度の方が高いので、1ドルに対する価値は、ココナッツヤッシーと日本円であれば、当然日本円の方が高いということになります。

でもそのココナッツ国に、新たに大規模な油田が発見されたとします。急速に豊かになる可能性が高まるうえに、ココナッツ国では外貨を獲得する手段ができるわけですから将来的な信用が高まるという理由で、ココナッツヤッシーのドルに対しての値段は上がります。経済的、政治的な力がついてくるということはその通貨が強くなるということを意味します。近年中国の人民元切り上げの話題がよく出てきますが、これは経済的、政治的に力が強くなってきているにも関わらず人民元が安いという指摘があるためです。

ユーロは設立当初たいへん安くて市場を悩ませました。「金や銀は単品であるから価値があるのであって、混ぜて売ることに意味が無い」という理屈が通って、パリティ(1ユーロ=1米ドル)を下回ることすらありました。しかし最近では見直しがなされ、各国中央銀行による外貨準備にも積まれるようになり、今度はユーロが高すぎて困るという次第です。

こういう大きな経済や政治の環境が変動する結果が通貨の値段に織り込まれ、日々私達が売ったり買ったりするモノの値段に反映されています。実は毎日のように私達は通貨の値段に関わって生きていると言っても過言ではありません。反対の見方を変えれば、外国為替を動かす情報はとても日常的なもので、どこでもいつでも取れますし、ありふれた身近なニュースからも取ることはできます。

外国為替で儲けるということは、「ある通貨の値段と値段の間を取る」ということで、すなわちそれは、「毎日流れるさまざま情報によって変化する通貨の動きを取る」ということです。

外国為替が日々動いているということはすでにおわかりと思いますので、あとはこの動いている通貨の価値をどうやって取るかということです。取り方はいろいろあります。

  1. モノで取る場合
    先ほどのマグカップのように、通貨が強くなった時に、相対的に弱い通貨のモノを買ってお金を浮かして残すこともできます。500USドルの一流ブランドのセーターを110円から105円になるのを待って買ったらこうなります。
      (500USD×110円)−(500USD×105円)=2500円
    2500円お得に買えたお陰で、2500円使わずに済んだ分が浮いて残ったことにはなります。しかしセーターのような消耗品を買ったのでは再び「お金」に戻す事はなかなか困難ですし、もっと多く取ろうと思えば、金額が大きくないとなりません。
  2. 外貨預金で取る場合
    投資として「お金」を使う場合、まずは安全確実に「外貨預金」という方法を考えるでしょう。この場合はモノを買う場合とは逆に、ある通貨が弱くなるのを待って買うのではなく、その通貨が弱くなっている時にその弱い交換レートで交換してそれを預金にしておき、その後その通貨が強くなれば、また交換し直します。すると強くなった分だけお金が増えていることになります。
    例えば1米ドルが100円の時に100万円分を米ドルに交換すれば、
      1,000,000円 ÷ 100円/1USD =10,000米ドル
    となり、10,000USDを持っていることになります。その後米ドルの価値が上がって105円になったとしたら、その時点で10,000米ドルを円に交換すれば、
      1,000USD × 105円/1USD   =1,050,000円
    になりますから、100万円の資金で5万円儲かったことになります。
  3. その他投資で取る場合
    預金以外の投資方法としては、他通貨建てになっている一般の投資商品である債券や株、また海外の不動産をその通貨が弱い時に保有して、強くなれば換金するという方法が取れます。
    50米ドルの株を200株、1米ドル100円の時に購入する場合、
      50USD × 200株 × 100円 = 1,000,000円
    必要となり、実際は1万米ドル相当の株を持っていることになります。
    この株の値段が変わらずに、米ドルの価値が上がって105円になったとしたら、その時点で1万米ドルを円に交換すれば、Aと同じように5万円儲かります。しかし株の場合、為替よりも株価自体の変動の方が大きい場合がありますので、1米ドルが105円になっていても、株価が45米ドルに下がっていれば、
      45USD × 200株 × 105円 = 945,000円 
    となり、5千円の損を被ったことになります。

このように「ある通貨の値段と値段の間を取る」ことでお金を残していくことが、外国為替で儲けるということになりますが、同じように動きを取ると言っても、取り方や元本の金額によって結果には大きな差が生まれます。元本が違えば当然リターンとしての儲けは違ってきますし、同じ投資金額で同じ5円の動きを取るにも、その投資結果はかたや5万円、かたや50万円というほど差が出ることがあります。これが次に説明する証拠金取引のしくみとなります。