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第1章 外国為替取引の仕組み

株式信用取引との違い

証拠金で取引をするものとして昔からある金融商品として馴染みがあるのが、株式の信用取引でしょう。株式の信用取引には、対象となっている上場株式を全額お金を出して買うのではなく、担保を差し出して、証券会社から株を買う場合にはお金を借り、売る場合には株を借りて現物の株式を売買します。この時証券会社に担保として「委託保証金」と言われるものを出します。委託保証金の最低基準は売買価額に対して、30万円以上かつ30%以上とされている場合が多く、現金以外に有価証券で代用することもできるなど証券会社によってそれぞれ基準を設けています。株式の売買金額すべての資金が必要でないという点については、外国為替証拠金取引とも似ています。

しかしまずレバレッジ率から考えると、30%ということは多くて3倍強にしかならないわけですから、現物株を売買する場合よりは手元資金が少なくて済むということはありますが、外国為替証拠金取引と比べるとレバレッジ的な魅力は劣ります。また現物株においては、「買う」という投資方法しか取れないのですが、信用取引を使えば「売る」という投資方法も取れるという点では、株式投資により深みつけることができます。

しかしそもそも個別の株式と為替では、マーケットでの商い高が全く違います。ずっとお話していることですが、マーケットはその参加者が多ければ多いほど、合理的で公正なものになりますし、一般的に情報を取ることも容易になります。レバレッジ率の大きい小さい以前に、個別銘柄での投資というのはかなりの労力と忍耐力がいります。

間接投資から直接投資を促す目的で、日本版金融ビッグバンの流れのなか、株式投資も最近ではかなり裾野が広がって来ました。なかには株式売買からの利益を期待するだけでなく、企業が株主に出す優待券などに惹かれて投資する場合もあるでしょう。これはこれで楽しみとしてはいいと思いますが、お金を作るというシビアな目的で行うには全く観点の違う話です。

また現物株の投資を全く行っていない人が信用取引のみを始めるというのもあまりお勧めできることではありません。株式相場における値上がり率や値下がり率をよく見て頂けるとわかると思いますが、一日の間に10%以上動くというのは普通ですし、勢いのある時には20〜30%動くということもよくあります。もっとも以前に比べれば、東京株式市場は勢いが衰えている感もあるので、東証一部の銘柄がダイナミックに動く日というのは減って来たのも事実ですが、最近は海外市場が高いということで、翌日起きてみると値段が飛んで始まるということもあります。こうなると途中の値段で逃げるチャンスもない状態となってしまします。

株式の信用取引における特徴のひとつは、追加の証拠金いわゆる「追証」という制度があります。これはある日信用で買って持っている株式の値段が下がる、あるいは差し入れている株式の価額が下がって保証金の最低証拠金維持率を割ってしまうにはその分の足りない金額を決められた日までに払うというルールです。

株式の値動きから考えると、追証というのは想像しているよりも発生しやすいものです。 例えば、30万円の保証金で4000円のハイテク銘柄のA社株300株買うとします。保証金維持率を20%としましょう。

それまでは好調と思われていたハイテク株の見通しでしたが、アメリカである有名なハイテク企業の決算予想が変更されたために夜アメリカのナスダック市場が急落したとします。朝自分の持っているハイテク株はいきなり売られて始まり、3600円だったとします。

単純計算ですが30万円の保証金内で損失が出せる範囲は、保証金維持率20%であれば、30万円×20%=6万円です。しかし朝400円も値下がりして始まったら、その時点で12万円分が少なくなっているわけですから、6万円の追加証拠金が発生することになります。 現物株は開いている時間も限られているので、こういう時に対処するのには大変不便です。しかし実際にこういうことはよく起こる事です。

ただし信用取引は現物株を保有している人が、その個別株のヘッジとして使うには便利です。例えば先ほどのハイテク株を300株現物株で保有していたとします。目先ハイテク株の見通しも良くないのでみすみす下落を待つのも嫌だという場合があるかもしれません。その時に信用取引を使ってつなぎ売りをしておけば、株は持ったまま目先の下落へのヘッジにもなりますし、急に風向きが変わって高くなってしまった場合には、自分の持っている現物株を差出すことによって済ませば追証が発生することもありません。

しかし信用取引であっても現物株であっても、個別株は市場全体の動きに左右されるだけでなく、個別の事情によっても動くので、その会社だけでなくその業界の情報を集める必要もあるなど、株式投資にはかなりまめさが必要です。もちろんいい会社を見つけて長い目で投資するというのももちろん悪いことではありません。しかし長期投資に耐えうるようないい良い会社を低成長下の日本で探すというのもなかなか難しいことですし、いうまでもなくこのような場合に信用取引は向きません。現物を買う場合にはその資金がそのまま必要ですから、時間軸も入れたリスクという点からも自分の資金運用のニーズにあっているのかどうか一考が必要でしょう。