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第9章 己を知る

塩漬け

ストップ注文を置かずに、そのまま損切る機会もつかめないまま様子見を決め込むと、当然それがシコリとなることがある。いわゆる「塩漬け」というものだ。

「これは上がるぞ!」と思って買ってみたものの、買ったとたんに相場の上げは一服する。一服どころか下がり始める。すると、昨日や一昨日においてもっと高いレベルがあり、そのレートが生々しく記憶に残っているときなどは、「またそのうちに元の値段に戻るんじゃないか」と思い込みやすい。また、そう信じたくなるのが人間の心理である。

程度の差こそあれ、こうして損切りの姿勢をとらないで、ひたすら相場が回復するまで死んだフリを決めこむことを「塩漬け」というが、塩漬けにしたところで相場が戻ってくれるという保証はない。仮に50%の確率でいずれは戻ることを認めたにしても、どのくらいの時間を要するのか定かではない。時間を無視する以上、利回りが計算できないので、もはや投資とは呼べない。長期で持っていれば、投資になるというものではない。

確かにすぐに使う必要のないお金であれば、それでもよいのかもしれない。しかし、日経先物のようなレバレッジの効いた証拠金取引というものは、事実上、塩漬けは不可能というよりもあまり意味がない。いくらでも証拠金を積んでおけばいいと思うかもしれないが、それでは何のために資金効率のよいはずの日経先物をやっているのか、本来の意義がなくなってしまう。日経先物をやるにおいては、塩漬けは出来ないと思って取り組むくらいでよい。

目先の20円、30円を取りにいくつもりであったものが、利食いゾーンに達することなく相場が反転してしまったときなどは特に注意が必要だ。50円幅ほど反対に持っていかれているが、大きく評価損が出ているわけでもないので損切りをしないで、翌日まで様子見姿勢に入り、戻りを期待するというパターンがよくある。当初の目的は20円、30円を取りにいくものであったならば、そのリターンに見合うリスクはせいぜいで10円、20円のはずである。ちゃんと考えれば、まったくリスクに見合わないリターンを狙っていることになる。注意したいのは、投機の失敗が投資になってしまうことである。短期のポジションのつもりであったものが、アゲインストにいってしまったという理由で長期のポートフォリオになってしまうことである。「投資は投機の失敗したもの」といわれないように慎みたいところだ。このような塩漬けを何回も重ねていると、しまいには割りの合わない高いものにつくのは目に見えている。